おもてなし百景

ちょっとした心遣い

ちょうど、ひな祭りの頃でした。昔、大阪のイタリアンの雄、ポンテベッキオに行ったときの事。

風邪を引いていた私は、食前に薬を飲もうと、サービスの女性に水を求めました。

ほどなく「お待たせしました」と出てきたグラスの水をひと口飲んでびっくり。

ぬるいのです。

私が薬を飲むと判断し、薬が体に馴染みやすいぬるま湯をわざわざ用意してくれたのでした。

「ありがとうございます」と驚いていうと、控えめに笑顔で返す彼女。

まだレストランでの経験も浅かった私はいたく感動し、いい意味で期待を裏切られたこのエピソードをあちこちで語りました。

・・・なんていうことを思い出したのは。今日それに似た感覚を体験したから。

先日、京都のLOFTで久々に買い物をしたのです。

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今日、中身を取り出そうとして、持ち手の輪のところの黒い店シールをはがそうとしたら・・・

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何と、黒いシールの端が僅かに織り込まれていて、はがしやすくなっていました。

これがなければ、ハサミを使うか、にゅ~と力を入れてビニールを伸ばして引きちぎらねばなりません。

LOFTさん、これ標準ケアですか?だとしたら素晴らしいなあ。

もし、3F生活用品フロアのその一店員さんのオリジナルケアだったら、綺麗なものを思いがけなく拾ったようでもっと嬉しいけど。

与えられたマニュアルでではなく、自分のひらめきとして、さりげなくもキラリと光るサービスを生み出すよう、私も心がけたいです。

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予約を断る時

私の働く店では、夜に時々、グループの社長が様子を見にやってきます。

ある時、ちょうど大学生のバイトの子がお客様の予約電話をお断りしていました。

「はあ、大変申し訳ございませんが、その日は満席で・・・ええ、恐れ入ります・・・。またどうぞよろしくお願いいたします。」

電話を切ったその子に、すかさず一言。

「あんな。
お断りをするにしても、お名前を聞くことやで。
それで、『○○様、ご連絡先だけ念の為いただけますでしょうか。』って、連絡先も聞くねん。『キャンセルが出ましたら、念の為ご連絡させていただきますので』って言うねんわ。
で、キャンセルが出えへんかっても、次に来はった時、『こないだは申し訳ありませんでした』って言うねん。」

確かに、これは他の飲食店ではなかなか望めない心遣いです。
人気店であればなおのこと、現場の本音はどこか、
「満席だとゆったりしたサービスが出来ないし、トラブルが起きても対応しきれないと困るから、自然減は歓迎」などというものじゃないでしょうか。

社長のこのコメントを聞いて、店の空気に違う風が入ってきたような気がしました。

現場の考えは自己中心的。
社長は、儲けのことも考えているかもしれませんが、考えの中心は「お客様のこと」だと思いました。

「だってな、京都に星の数ほど料理屋があんねんで。
そん中からうちを選んで、お客様のほうからわざわざ電話してくれはってんから。
ほんまにありがたいことやろ。
それを忘れたらあかん。」

お客様の側に立ったとき、せっかく行こうと思った店が満席だったら、どんな受け応えが一番嬉しいか?
私なら、店が人気やネームバリューに奢らず、申し訳なさそうな声でこちらの名前を聞いてくれるだけでも嬉しいです。
ましてや、キャンセル時のひと手間を約束してくれたら、「人気があるのに謙虚だなあ。また来よう。」と好感を持つこと間違いなしなのです。
これぞ、味が図抜けていなくてもその店に通う理由、『サービスは味を超える』瞬間です。

社長の言葉から気付くのでなく、自分の標準の立ち位置から、当たり前のようにそんな考えが出てこなければ本物ではありません。

背筋が伸びる思いだったと同時に、「ひょっこりやってきて1つのシーンをみてさらりと改善する社長は、伊達に44年もこの業界で苦労をしてきてはらへんよなあ。当たり前のようで、ここまで現場にとってコアな部分を逃さず指摘するのはなかなか出来ないよ・・・」と改めて尊敬するのでした。

しかし!

問題は、その情報をどうやって共有するかなのでした。
再度別の日に予約をトライして、無事来てくださったお客様の経緯を認識し、ちゃんと漏れなく謝り、感謝するには??

「それはな。
コンピューターでもリストでもないねん。
『カンピューター』や。(頭をさして)ココやねん」

ご、ごもっともで・・・(汗)。
これは、備わっていればものすごく貴重な才能です。
そして、ほとんど毎日入っている現場サービスのマネージャーは、努力を重ねてそのセンスを身につけなければならないと思います。
私も、入っている頻度を思えば限界があるけれど、微力ながら協力できればと思います。

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日本料理屋の披露宴

店で婚礼の宴がありました。

我が店には広間があるのですが、ゆったりとお食事してもらうためにはせいぜい20名までです。

それでも、新郎新婦がどうしてもこちらで披露宴がしたいと仰ってくださり、2階の広間と廊下を挟んだ部屋の引き戸を取り払い、若干見にくくはあるものの32名での賑やかな宴会です。

写真が紹介できず申し訳ありませんが、婚礼向けの対応としては

  ・列席者のお箸や、食前酒を注いで廻る酒器に、水引をあしらう

  ・食前酒の器は朱塗りの盃

  ・水引が写された和紙に毛筆で書かれたお品書き

  ・婚礼向けのお料理(結び昆布入りのお茶、金箔の載ったカラスミに
   紅白なます、尾頭付きの鯛にお赤飯、などなど・・・)

  ・豪華な和花を使ったアレンジメント

などでしょうか。

こういう日本料理屋のウエディングは、席は隣同士がぶつかりそうなくらい狭いですし、色とりどりの照明もスモークも洒落た音響もありません。

でも・・・、

今日しみじみ感じたのは、「昔の婚礼の宴ってこうだったのかもなあ」と想わせる、何ともいえないアナログさとアットホームさです。

向かい合わせになった列席者が、にぎやかに杯を重ねて新郎と新婦を見て話し合い、笑いあい、そして何といってもお料理に舌鼓を打つ。ひとたびスピーチが始まれば、皆が聴き入る一体感。

最後に新婦のお父様が「料理長を呼んで欲しい」と仰って、慌ててやってきた料理長を列席者の前に引っ張り出し、「今日の素晴らしい料理を作ってくれた○○さんです」と紹介くださり、料理長は多分もちろん、私たちも、そして列席者も惜しみない拍手で余計まあるく幸せになったに違いないのでした。

サービスを担当する一人員としては、やはり婚礼のプロであるべきだよなあ・・・と何だか申し訳ない気分でしたが・・・。

ところで、この日の主役、世界遺産・糺の森をいただく下鴨神社で羽織袴、島田と打掛で厳かに神前式を挙げたのは、何とフランス人の新郎と日本人の新婦でした!(当然、列席者はほぼ半分がフランス人!)

「彼、こちらが大好きになってしまって・・・」と、最後の僅かな時間に店内や坪庭に一眼レフを向けている新郎を見守る花嫁の、和花をバックにした打ち掛け姿が綺麗だったこと。

そして、「花嫁と日本ラブ!」オーラが漲っていた新郎が、本当に嬉しそうで幸せそうでした。

「是非今度また、お二人でいらしてくださいね」とお伝えし、お見送りしました。

本当にほっこり心が温かくなる、今日のお席だったのでした。

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こんなお子様連れのお客様はいただけないです・・・

と、いきなりネガティブ発言ですみません。

でも、もし日本料理屋にお子様同伴でいらっしゃる場合は、最低限まもるべきマナーだと思うので書くことにしました。

(以前、素敵なお子様連れのお客様の話を書きましたが、今回はちょっと悪い例です。)

私の働く店には個室1階に1部屋、2階に3部屋あるので、よくあるような「○才未満のお客様はご遠慮ください」なんてことはなく、予約を承っています。

もちろん、献立についてもある程度柔軟に要望を伺い、大人と同じお料理が食べられないお子様の為には、別献立を板場に通します。

お孫さんを囲んでの家族での食事会などは、見ていて本当にほほえましく幸せな感じで、接客するこちらとしても、この素敵な食事会の縁の下の力持ちになりたい、と腕まくりしたくなります。

しかし・・・。

まあ良くないことなので、簡単にさらりと箇条書きにしましょう!

 ■お子様の離席はいいが、部屋の外に出るのは絶対にNG

   →  階段等があり大変危ないです。また、他の個室のお客様にも大迷惑

 ■お子様を叱るのはありがたいが、そのせいで大声で泣かれるのが最悪のパターン

   →  「いやだーーっ!」と金切り声をあげられても、他のお客様に申し訳なくてぎょっとしてしまいます。

 ■塗りの折敷を割り箸でお絵かきボード代わりにしたり、おさじをガチガチと噛む

   →  高価な塗りは一度傷がつくと修理代も大変高額です。大人の料理が終わるまで退屈されないよう、必ずおもちゃを何かをお持ちください。

 ■食べ物で汚れた手で窓を叩いたり、舐めたりする

   → 業務用のきつい薬品で窓を磨いているので体に大変悪いです。

今回担当したご家族は、おばあちゃんとパパママ、そして3歳のボクだったのですが、食事の最後の方でおばあちゃんとママがお会計&お土産を買いに席を立たれ、ボクは寂しくておばあちゃんとママを求めて階下に行こうとします。

でも残ったパパは「ここにいなさい」と一声かけただけで、あとは部屋で携帯に夢中。

階段から落ちたら大変と、ずっと見守らなければならず、ママ恋しさに加え知らない大人にそばにつかれてお子様の機嫌はどんどん悪くなっていき・・・参りました(涙)

こちらのご家族へのお世話は精一杯したつもりですが、他のお客様方はさぞかし騒がしく、落ち着かなかったことと思います。

決して安くは無いお料理を、サービス料を払ってまで食べに来てくださるお客様にとって、私たちがお世話するこの時間は非日常のものでなくてはなりません。

雰囲気が良くて落ち着く店だ、という利点を感じていただけているならば、お子様連れのかたでも、他のお客様の同様の期待を尊重する配慮をいただきたいものです・・・。

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料理人さんの一日

料理人さんというのは本当に大変な職業だなぁと思います。

あちこち食べ歩くようになって、大変そうだなと思ってはいましたが、カウンター越しに聞く話は氷山の一角だと判りました。

一般のお食事タイムは、昼は12時・晩は19時等ですが、当然、8時間勤務&残業代なんて正直言って異次元の話、毎日毎日朝早くから日付が変わる頃まで!

まかないの時間は、昼のお客さんが引けてからですから早くて14時頃、そこから夕方の仕込みが始まるまでのほんの僅かな時間が休憩時間。休憩時間以外は、ずっと立ちっぱなしです。

しかも観光シーズンはそれに拍車がかかり、私の働く店でも、4月は定休日を設けなかったため、料理人さんたちは約1ヶ月間休みなしでした。

当然、飛んじゃう子(京都用語でしょうか?突然いなくなる、の意です)も多いです(涙)。

Dsc01331 そんなストイックな中でも、一流の日本料理屋の料理人さんの場合、空き時間や休みの日に茶道華道を習っているというのだから凄いです!(写真はイメージ 笑)

今の店で働き始めるとき「月数回、裏千家の先生が店に来てくださって、お茶の手ほどきを受けられます」と聞いて、「へぇ♪やっぱり、接客には優雅な物腰が必要よね」と嬉しく思ったものですが、接客係よりも料理人さんが勢ぞろいしていたのにはびっくりしました。

以前も挙げましたが、うちの店では、契約している花屋さんが週に2回ほどお花を替えにきています。

ある程度の規模の店ではそれも出来ますが、個人で頑張っている店主兼料理長のような店だと、それも自分で調達し、自分で活けなくてはならない、客の中にはうるさ方もいるから適当ではまずい、だから華道を習う・・・というわけ。

料理だけ極めていれば良い、などという世界ではないんですね。Dsc01332

本当に大変だなぁと思うと同時に、日本料理屋で食事をするというのは、そんな見えない苦労や手間に縁取られた得がたい空間で時間を過ごすということなのだ、と改めて思うのでした。

(写真は茶花。紫の小さな花は都忘れ、白い花はショウマ、背の高いつぼみは紫蘭です)

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~じき宮ざわ~ サービスに勝るものなし

両親の結婚40周年のお祝いにささやかながら、と、とある割烹に行ってきました。

Dsc01266 出来たばかりのこの店ですが、初めて伺ったときとても気に入ったので間をあまりあけない2度目の訪問です。

ちゃんとしたお店の場合、事前に伝えていれば、こういったお祝いごとでの食事にちょっとした演出をしてくれるのはよくあることです。

例えばフレンチやイタリアンならデザートのお皿に軽くチョコペンで「おめでとうございます」等デコレーションしてくれたり、ポラロイドを撮ってくれたり、日本料理ならお箸に水引がかけてあったり。

というわけで、今回も予約の際にそんな趣旨を伝えていたのですが、・・・・前回のような美味しい食事が終わる頃には、あー満足満足、と何となく忘れていました。

・・・のですが。

お薄が出た後、カウンターの向こうの大将が「これは、お店からささやかですがお祝いです」と仰って差し出してくださったのは、なんとバラの花束。カードも添えられています。

これにはびっくりしました。

だって、何度も通ったお得意様ならいざ知らず、2度目の私に、こんな直接的に原価のかかるサービスはありえない・・・お店の立ち上げでかかった多くの支出をどんどん回収しなければならないときに、こんな気を遣わせて本当に申し訳なかったです。

ただ、恐縮しつつも・・・、両親は本当に喜んでおり、私もとても嬉しかったのです。Dsc01265

でも、だからこそやっぱりこれはこのままにはしておけません。

気を遣わせたことへのお詫びと、それでも嬉しかった気持ちのお返しに、ちょっとした御菓子、自分のお気に入りの一品か何かを、後日お店に届けようと思います。

お店の方はもちろんそんなことは期待していないと思いますが、こういったことが、これからお店と良い関係を築いていくエッセンスになったりするのです。

皆さんも、過分なるおもてなしを受けたら、「客なのだから」と当たり前に受け取らず、ありがたい、嬉しいという気持ちをささやかでもいいから表現してみることをお勧めします。

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